ゴルフコースでお花見を「砧公園」

dsc毎年、花の季節になると、その公園に行きたくなる。成城石井でカリカリのバゲット、チーズ、冷えたビール、そしてシャンパンを買い込み、アウトドア用にしているステンレス製のワイングラスを持って。その公園の“お花見”には、団体客の持ち込むカラオケや、朝からスーツ姿で場所取りをする若手社員の姿は似合わない。だいたい、場所取りは必要ない、ぐらい広いのだ。世田谷のはずれにある砧公園はもともとゴルフ場だったらしい。確かにそう思って眺めると、右ドッグレッグのコースだったんだ、と分かる芝の原っぱがある。ミドルホールだったと思われる私が好きな場所は、小さなクリークを渡ったところにある。

毎年何組かの友人夫妻を誘って、いつもフェアウェイの真ん中、調子が良ければ1打目のランで届くぐらいの場所に陣取る。この年は、スケジュールがなかなか合わず、3人だけの、“のんびりランチ”になった。お酒が飲めない2人の奥様はサンドウィッチとテイクアウト用のカフェラテ。独りでも気にせずシャンパンのベビーボトルを持ち込む私との、ささやかな宴。ステンレスのワイングラスと紙コップの、音の出ない乾杯。

何年か前の夏、この公園を一緒に訪れた後輩がつぶやいたことがあった。「何か、幸せな休日の風景って感じっすよねぇ。この風景の中に俺も入れたら良いっすねぇ。」…彼はクリスマスに付き合いはじめた可愛い恋人と、別れたばかりだった。

3人の娘の父親になった彼は、きっとどこかの公園の平和な風景に溶け込んでいるに違いない。2人の奥様たちは、写真を撮るよと声を掛けるとゆっくり振り向いた。モニターを覗くと、嬉しいことに彼女たちは、この風景の中に馴染んでいた。
そして、フェアウェイを外れても、OBを出しても、連合いが先にホールアウトしても、ずっと一緒に同じコースを回ろうね、そんなことばを交わしているような2人の後ろ姿だった。

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